「今回は違う’This time is different’」シンドローム

ある経済学者が過去800年にわたり世界の66カ国の国について調査研究したところによると、

「政府や権力者が戦争や債務返済の財政資金を調達するため、貨幣管理権限を悪用して貨幣に手
をつけると言う悪習が一向に変わっていない。金属貨幣から紙に印刷した現代の銀行紙幣に移行
することによって、ますます貨幣破産は深刻に、より破壊的になった。」

と警告しています。

吹けば飛ぶようなアルミコインの1円玉も、もともとは1円金貨と言う立派な高額貨幣でした。フ
ランスのリーブルも金貨の単位でしたが、最後には銅貨の単位になってしまいました。世界の貨
幣史は、最初は金貨や銀貨貴金属単位でしたが、低級な金属が混ぜ込まれる、貨幣品位の低下に
よって安っぽい単位になっていくのです。

この安くなった分は、時の政府や権力者にかすめ取られ、彼らの財政資金の穴埋めに使われてき
ました。貨幣が減価すれば国の赤字もその分だけ減価します。
しかし一般人にとっては財貨の購入や支払いにはより多くの貨幣が必要になり、物価は上昇して
いき、インフレを引き起こします。

金属貨幣から紙に印刷した現代の銀行のお札、つまり紙幣に貨幣価値が移行することによって、
さらに国家財政は深刻に破壊的になっていくのです。

財政破産が起きると、貨幣に対する信頼が低下する貨幣破産が引き起こされます。
インフレによる財政資金の捻出は、悪質で深刻な大衆収奪となります。

18世紀までの貨幣破産の歴史を見ると、
アジアとヨーロッパのすべての国が20%以上もの高インフレを経験し、大半の国が40%以上のイ
ンフレに何年も苦しめられてきました。最高インフレの年率(%)の高い国は、アメリカ193%(1779
年)、ベルギー185% (1708年)、イタリア173% (1527年)、韓国144% (1787年)、ドイツ141%
(1622年)、フランス121% (1622年)、中国117% (1651年)、オーストリア99%(1623年)、日本
99% (1602年)でした。

19世紀から現代までの貨幣破産の歴史はさらに悲惨なものでした。
ヨーロッパ、アジア、北米の34カ国について、物価上昇率が500%を超えるハイパーインフレを経
験した国は、その回数の多い順に上げると、次のようになります。カッコは最高インフレの年率
を記録した年です。ロシア8回(1923年)、ギリシャ4回(1944年)、中国3回(1947年)、オーストリ
ア2回(1922年)、ドイツ2回(1923年)、ポーランド2回(1923年)、ハンガリー2回(1946年)、日
本1回(1945年)、インドネシア1回(1966年)。
ロシアのハイパーインフレ8回には驚かされます。ハンガリー、ギリシャ、ドイツのハイパーイン
フレの年率は、10を何乗か重ねた天文学的数字であり、実に恐ろしいものでした。これがわずか
1年ほどで発生したのですから、餓死や生活苦による自殺など、おびただしい犠牲者が出たことで
しょう。

中南米、アフリカの24カ国について、500%を超えるハイパーインフレを経験した国は、その回
数の多い順に上げると、次のようになります。カッコの数字は、最高インフレの年率を記録した
年です。ブラジル6回(1990年)、ニカラグア6回(1987年)、アルゼンチン4回(1989年)、アンゴラ
4回(1996年)、ペルー3回(1990年)、ボリビア2回(1985年)、ジンバブエ(進行中)。ブラジル、ニ
カラグア、アルゼンチン、アンゴラ、ペルー等の回数には驚かされます。これらが1990年代の近
年になっても起きたのです。

私は納税者の1人として、この経済学者の警告を深刻に受け止めています。
人間は自分の得ることができたお金の範囲内で、慎ましく買い物をして生活していくべきです。借
金までして、つまらないことにたくさんのお金をつぎ込んだら、ひどい人生になります。お金の使
い方を誤らないように皆、気をつけています。

それなのに現在の日本は、2%の物価上昇を目指して、借金をしてたくさんのお金をばらまいてい
ます。
お金をばらまくと、もらった人は不平不満を言わなくなります。

今年4月から
・雇用保険料総額

来年からは、
・所得税増額
・健康保険料の負担額増額

さらに、その後には
・退職金の非課税枠を縮小
・厚生年金の支給減額

なども計画されています。

国家の財政を預かる者は、その国、その時代の最も有能な者が選ばれて財務を担当してきたはず
です。人類は本当に進歩しているでしょうか?
この財務担当者が、「今回は違う’This time is different’」シンドローム(症候群)になっていなけ
れば良いのですが…

貨幣破産のツケを払うのは、財政を担当した者ではなくて、私たち国民なのです。

投稿日:2023年05月18日(木)